昔々のその昔。医療用材料として院外処方で保険請求が可能なのは注射針だけでしたが、今から10年前、平成26年から「皮膚欠損用創傷被覆材」も可能になりました。
さて可能になったはいいが、この10年間その類の処方せんに出会うことがありませんでした。が、転職したら出会ってしまいました。
実際に処方が来たらどうレセコンに入力すればいいのか調剤事務の皆さま分かりますでしょうか?私は分からなかった!
ということで、調剤事務が知っておくことをまとめました!
特定保険医療材料って情報がバラバラすぎて(ていうかまず商品名で検索したら通販サイトにいってしまいませんか・・・?)調剤事務的にどうすればいいのか迷うこと多し!頭の隅においておいて損はありません。
まずはメーカーがまとめた資料を見てみましょう
そもそも薬価収載されていない薬品がポンと処方せんに載っていると焦るもの。加えて今回の皮膚欠損用創傷被覆材は薬品名でネット検索しても調剤事務の求める情報にヒットさせるのは難しいと感じました。
なのでこちらを貼り付けておきます。今回の件について詳しく書いてくれているこちらのHPを。
皮膚欠損用創傷被覆材の償還価格と保険請求 (smith-nephew.com)
上記HPではどういう条件の患者さんに「皮膚欠損用創傷被覆材」が保険適用で処方可能で、処方数量に湿布剤のような上限があるのか、レセコンにマスタがない場合の電算コードと価格・・・等まとめられています。こういう処方がくることがあると頭の片隅に置いておくだけでも、実際に処方せんが来た時の対応が変わってくると思います。
最初から説明を丸投げしたように思われるかもしれませんが、上記HPは医科も調剤もひっくるめた説明で理解が難しいので、あくまで「調剤事務はどうする」の視点で解説していきたいと思います!
大前提としてそもそもレセコンの薬品マスタに皮膚欠損用創傷被覆材が登録されていなければレセコン入力もできないのですが、その登録がお勤めの薬局では無く、登録作業にやきもきする人も多いはず。今回処方がきたデュオアクティブは上記の一覧に載っていないので、電算コードと価格は下記一覧を参考にしてください。どの項目に分類されるかは、卸さんに聞くのが個人的には一番早いと思います!
特定保険医療材料一覧(2020年4月改定版).pdf
参考サイト
#041 特定保険医療材料の一覧(2020年4月改定版) | メディカルサーブ株式会社 (medical-sv.com)
医療用材料なので、調べようと思って検索かけても楽天等の通販サイトだったり、色々調べたくても各メーカーの自社製品しかまとまってなかったりして調べにくいですよね。
いざ、処方せんが来た時に「調剤事務のお部屋」に特定医療材料のPDF載せていたことを頭の片隅に置いておいていただけたら幸いです。。。
さて、処方入力だ!
さて、レセコンによって皮膚欠損用創傷被覆材のマスタがない人は、前述のサイト・PDFや卸さんからの情報を参考に登録したとして、そこから先のレセコンの入力はどうなるのか。
ちなみに今回私のところに舞い込んだ処方せんはこんな感じ。
「皮膚欠損用創傷被覆材」のみの処方でした。
注射針と同じようにしよう・・・と言いたいところなのですが、基本的に注射針は単品では処方できず、必ず注射薬がセットでついてくるため調剤基本料等々の算定で迷うことはなかったと思います。
が、「皮膚欠損用創傷被覆材」が単品できた。。。特定保健材料のみの処方で調剤基本料を算定していいのか・・・からつまずいた私なのでした。
①レセコンメーカーに聞いてみた
とりあえず、私の使っているレセコンでは医療用材料単品で入力したら「本当に単品で処方入力していいんですね?」という内容の念押しポップアップが出てくるので不安もあり、入力が正しいかも含めて確認したかったので、まずはレセコンメーカーに問い合わせてみました。
問い合わせ内容は以下3点です。
- 「皮膚欠損用創傷被覆材」のみの処方は可能か
- 調剤基本料は算定可能か
- 在宅薬学総合体制加算(15点)は算定可能か ※居宅療養管理指導料をとっている患者だったので
これに対するレセコンメーカーの回答はこうでした。
①注射針と違って単品での処方OK
②調剤基本料も算定してOK
③これに関しては可能かどうかを示す文書が見つけられませんでした。本来「調製料」部分にかかる加算なのでちょっとグレーな感じはします。薬剤師会か審査機関にお問い合わせください。
とのこと。
「本当に単品で処方入力していいんですね?」ポップアップはH26年までの注射針しか医療用材料の保険適用が認められていなかった時代の名残なのだそうです。レセコンメーカーさん…心臓に悪いので旧制度の名残は消してください。。。
さて、この回答をもって私は薬剤師会には問い合わせしませんでした。。。薬剤師会も結局責任をもった回答をしてくれないことが多く、結局「最終的に判断するのは審査機関です!」って定型文を言われるのが目に見えているのです。なので次に審査機関に問い合わせしました。
②国保連合会に問い合わせしてみた
さて、残った疑問「在宅薬学総合体制加算15点は算定可能か?」を国保連合会に問い合わせしてみました。
国保連合の人の回答はこうでした。
「皮膚欠損用創傷被覆材」って保険適用されるようになりましたっけ・・・(何年か前からOKになりましたと返答すると)・・・あ、なったんですね。
それで居宅療養管理指導料をとっている患者さんなんですよね。15点算定していいと思いますよ。そちらの思うように算定してください。
介護保険の方と突合されて認められると思うので大丈夫だと思います。
「思うように算定してください」とは審査機関の人にしては随分とおおらかだな~、と思いましたが、この回答をもって算定してみることにしました。支払基金より国保連合会の方がなんとなく寛容な気がしますね。
追記:その後無事、このレセプトは減点も返戻もされず入金されましたことをここにご報告いたします!
結論:「皮膚欠損用創傷被覆材」単品の処方で算定できる点数はこちら
結論。「皮膚欠損用創傷被覆材」が単品で出ても
①特定保険医療材料費(薬剤料)
②調剤基本料
③在宅患者調剤加算(居宅・在宅療養管理指導料をとっている患者なら)
この3つは算定できるようです。ご参考に!!
重要!処方量は「パッド部分」の大きさで保険請求することに注意。
さて、処方せんには「デュオアクティブ(10㎝×10㎝)5枚」と書かれているので素直に処方量【5枚】と入力したくなるのですが、「皮膚欠損用創傷被覆材」は処方単位が「g」および「㎠」なので【500㎠】です。気を付けてね。
・・・と締めくくりたいところですが、最後にもう1つ気を付ける点をアナウンスしておかねばなりません・・・
「皮膚欠損用創傷被覆材」は処方単位が「g」および「㎠」、そして保険請求が認められるのは、そのもの自体の大きさではなく、「パッド部分」の大きさなのです。
こういうこと・・・↓
テープ部分を含まないパッドの部分のみが保険算定できる面積です。 パッド部分の周囲に粘着面がある創傷被覆材は、粘着部分をはぶきます。
※ 注意:ドレッシングサイズ = 保険算定面積ではありません
なんとう煩雑さ・・・!!
今回のデュオアクティブは総面積もパッド部分の面積も10㎝×10㎝で一致しているのですが、確かに調べてみると、中には総面積と粘着部の面積が一致していないものもあるので気を付けてください。全体の大きさは10㎝×10㎝で100㎠でも、パッド部分の大きさは7㎝×7㎝で1枚49㎠とかいうものも存在します。。。すごい落とし穴です。。。
まとめ
まとめましょう。「皮膚欠損用創傷被覆材」が処方された場合、調剤事務が把握すべきことは以下3点。
- 単品での処方も保険適用が認められる
- 単品でも調剤基本料・材料費・在宅患者調剤加算の算定OK
- 全体ではなく、パッド部分の面積で保険請求する
です!!ここまで把握しておけば調剤事務としてはとりあえずなんとかなるのではないでしょうか・・・。
ちなみに湿布薬のように処方枚数に上限があるのかと言えば、先述したHPに上限はマックス3週間分と書かれています。ですが使用量は創傷部位の大きさにもよるので湿布のように「○枚まで」とは言えないようですね。感覚的にあまりにも多すぎる気がしたら疑義、くらいでしょうか。ここは薬剤師さんの判断にお任せすればよいかと思います!