【21】自立支援(精神通院)は、患者さんが申請した医療機関と薬局それぞれ1つだけ、対象疾患における医療費が上限額ありの1割負担になる公費です。
そう、【21】は患者さんが先に登録している医療機関でないと公費の適用は認められません。登録していない医療機関で受診する場合は3割負担することになりますね。ちなみにこの公費制度は償還請求(患者さん自身で過払い請求するもの)も出来ないのがやっかいなところです。
ではもし、訳あって登録している病院以外で【21】対象の薬が処方された場合、薬局では公費の対象として1割負担として扱っていいのでしょうか??
福祉事務所に確認してみたお話です。
【21】指定病院の予約がとれず、別の病院で処方せんをだしてもらった患者さん
私の働く薬局を【21】の指定薬局に登録してくださっているAさん。いつも同じく指定医療機関に登録している病院(以下A病院)からの処方せんを持参されるのですが、その日は違う病院(以下B病院)からの処方せんを持参されました。
そしてよく見ると、処方内容はいつもの指定医療機関に登録している病院とDo処方です。こ・・・これはどういうこと・・・??
Aさん、今日はA病院からの処方せんじゃないんですね。お薬の内容はいつもと同じですが・・・病院変えられたんですか?
実は私の都合の良い日にA病院の予約がずっととれなくて。予約がとれない間にもう薬がなくなってしまったので、急遽B病院で処方せんを書いてもらいました。
それは大変でしたね・・・ちょっと今回、登録されているA病院からの処方せんじゃないので、薬局でもお薬代が1割になるかならないか、公費の発行元に確認させてください。私の知識不足で恐縮ですが、ちょっとお時間くださいね。
ちなみにB病院でもお会計は3割支払われましたよね?(電話受診だったため自己負担管理表は白紙のままでした)
え、病院も3割だったんですかね。電話での受診だったので気づきませんでした・・・お薬代も3割なんですか・・・
精神疾患で初診で電話受診ってっ大丈夫なのかな(当時はコロナの「0410対応」という制度があり、それを利用されていました)・・・とそこも気になりましたが、そこは置いておいて・・・。ということで心苦しいですが間違ったことをしては更なる迷惑をかけてしまうので、少しお時間いただいて確認することにしました。
【21】の発行元の福祉事務所に確認してみた
Aさんに関する問題をまとめるとこうです。
受診した病院は指定医療機関ではないけど、処方内容はDoで明らかに【21】の対象薬。薬局はちゃんと指定薬局として申請されている。この場合、薬局での患者負担は1割?3割?
ということで、初めてのケースだったので公費の発行元に確認してみました。
薬局でも3割です。
【21】の対象として1割負担に出来るのは指定医療機関からの処方のみですので、そこは患者さんにもご理解してもらってください。
考え込むこともなく即答されてしまいました。。。私にとっては初めてのケースで自信がありませんでしたが、福祉事務所の人の対応から察するに、意外と少なくないパターンなのかもしれません。
Aさんは登録申請した病院で受診しようと何度も予約を試みたものの、予定があわず、やむを得ずB病院を受診したわけですが、そのような例外も認められないようです。
【21】対象の薬で時々問題になる「乱用・転売」を防ぐという目的で医療機関を1つに絞らせている考えれば妥当な対応かもしれません。忙しい人が、人気で予約が取りにくい病院を指定医療機関に登録する場合はこのリスクも考えておかねばならないと言えそうです。。。残念。
Aさんには事情を話して病院でも薬局でも今回は3割負担になることを了解いただきまして、今回はクローズです。
【21】は指定医療機関として登録している病院からの処方せんのみ、薬局でも適用できる!
そんなわけで、Aさんは今回病院でも薬局でも3割負担となってしまいました。次回からは時間にもっと余裕をもって病院の予約をとれるように気を付けてくださるとのこと。
【21】の対象疾病に対するお薬であることが明らかな場合でも、薬局に公費扱いにする権限はなく、あくまで指定医療機関として申請された病院から発行された処方せんのみが薬局でも1割負担での取り扱いが可能となりますので、調剤事務の皆さまに情報共有でした。。。無念。
余談ですが、このAさんのケースがあった時は「お薬がなくなるまでに予約をとれなかったAさんに責任がある(?)とはいえ、やむを得なかった場合はもう少し柔軟に出来たらいいのになぁ」と思ったりもしました。
でもこの件でふと思い出したのは、市川猿之助さんのニュースです。ちょっと一昔前に感じるニュースかもしれないですが、あれを思い出すにつけ、向精神薬を大量に入手出来ちゃうと起こり得る怖い事例を目の当たりにすると(市川猿之助さんがどうやって致死量の睡眠薬を入手したのかは私は知りませんが)、【21】に関してはやっぱ適切な管理の下での治療が必要なんだなとも思うのでした。