調剤事務の仕事を始めたばかりの人がまず混乱するのが「計量混合加算」と「自家製剤加算」だと思います。
【剤形が変化するかどうか】という点をを理解し、一山乗り越えた…!と思ったらレアな処方せんに出会ってまた躓く事があるのがこれらの加算という印象です(;´・ω・)
なので、うさぎ太郎が実際に出会った、返戻されたり、現場で迷った自家製剤加算にまつわる処方例を集めてみました。こんな処方、出会ったことありますか?
粉×液は自家製剤加算。ドライシロップ(DS)×液剤はなんで計量混合加算なの?
過日、耳垢水の処方せんを受付ました。※耳垢を柔らかくして除去できるようにするためのもの
粉と液を混合して最終的に液剤になるものです。なので自家製剤加算(点耳薬なので75点)を算定しました。
さて、翌日調剤事務2年目の調剤事務さんがその調剤録を片手に言いました。
うさぎさん、これ計量混合加算の間違いじゃないんですか??
この調剤事務さんはなぜそう思ったのか紐解いていきましょう!
①原則は【同剤形の混合→計量混合加算】【異なる剤形の混合→自家製剤加算】である
いやいや、炭酸水素Naは散剤。グリセリンは液剤。最終的な剤形が液剤、点耳薬として自家製剤加算で75点だよ。どうして?
いえ、私も自家製かなと思ったんですけど、自信がないから本で確認してみたら、こう書いてあったんです。見てください。
【ドライシロップは液剤と混ぜても計量混合加算とする】
て書いてあるんですよ。だからこの処方せんも自家製とれないんじゃないですかね。。。。
なるほど。でも自家製の算定要件の見て。
【同剤形×同剤形の混合は計量混合】【最終的な剤形が変化する場合は自家製剤加算】
基本はこれで間違いないよ。
今回のお悩みを解決するポイントはDS(ドライシロップ)が他の粉剤と取り扱いが違うことを理解する必要があるよ!
粉の薬の剤形の種類を把握してるかな?ほれ、散剤棚を見てみよう。
一口に散剤といっても「原末」「散」「DS」「細粒」「顆粒」とあるよねこの中でも計量混合・自家製剤加算においてDSだけが特殊なんです。
DSが特殊な理由さえ押さえておけば迷いません!
へ~、散剤の形状の違いなんて気にしていませんでした。
ではDSはどう特殊なんでしょうか??
②DS(ドライシロップ)はもともと水に溶かして飲むことを前提として作られた剤形ゆえ、「剤形が変化した」とは捉えない
ではそもそも、DSとはなんなのか把握しておきましょう!・・・簡単に散剤の剤形の違いを説明してくれているサイトから引用させていただきました。
日本薬局方では「シロップ用剤」として区分されており、水を加えることでシロップ剤となる顆粒状または粉末状の製剤のことをドライシロップと呼びます。
水に溶かしてシロップ剤として服用するほか、そのまま粉の形状で服用することも可能です。
粉薬の種類(散剤、細粒、顆粒、ドライシロップ)の違い (for-guests.com)
上記の通り、そもそもDS(ドライシロップ)は散剤でありながら「シロップ用剤」として作られているのです。
この引用を読んだら腑に落ちるんじゃないかな?DSは散剤であり、シロップ剤でもある。だからDSを液剤に溶かしても、自家製剤とは言えないってこと。
なるほど~!!やっと納得しました。DSだけが液剤と混ぜても自家製剤加算にならないんですね!!
いかがでしょう。これを押さえておけば、また一つ計量混合加算と自家製剤加算の判断がスムーズになるのではないでしょうか。
③それにしてもDSって・・・
さてさて、DSが自家製剤加算取れない理由は理解したとして、なんだかモヤモヤが残りませんか。
DSを液と混ぜても自家製剤加算が取れない理由は分かりました。
でも、じゃあ・・・DSって液剤と混ぜても計量混合加算しか取れなくて、行為としては他の散剤とやってることは同じなのに低い点数しかとれないんですね。なんだか薬剤師さんの技術料を正当に評価していない気がします。
【調剤報酬あるある】だよね。。。
技術料がもっと正当に評価される調剤報酬改定になってほしいと全薬局従業員が思っていることって他にもあると思うんだよ。
錠剤を割錠した時の評価とかね(2022年の改定は改悪というほかなかったですね)、一包化の条件とかね。今後色んな事例に出会う度に、いろいろ出てくるでしょう。。。それはまた、別の記事にしましょうか。。。
含漱用ハチアズレ顆粒を溶解→水剤として調剤すると・・・自家製?計量混合?
次はこんな処方せんはどうでしょうか。
①剤型が変化したら自家製じゃないの?(part2)
ハチアズレは粉のうがい薬です。分包品のまま処方するのがメジャーですが、今回は患者さんがご高齢なこともあり、このような処方になったようです。この時レセコンを入力した調剤事務さんはこう思いました。
ハチアズレを液剤に溶かして処方・・・粉だったものが液剤に剤形変化するんですね。
調剤の結果、剤形が変化するするものは自家製剤加算!外用薬で最終的な剤形は液剤だから自家製剤加算の45点かな!?
一見、正しい判断に思えますよね。
しかし、このレセプトは3ケ月後に減点通知を受けることになるのでした。。。
②水に溶かして使用するのが前提の薬は、自家製剤加算は算定できない!
さて3か月の後、前述のレセプトにおいて、45点の減点処理されてしまった減点通知書が届きます。
含漱用ハチアズレ顆粒を精製水等に溶解して液剤として処方したのにそしてなにより前述したDSとも違うのに・・・
と、ここである薬品の処方について思い出してみましょう・・・クラバモックスです。
昔から薬局で働いている人しか知らないかもしれませんが・・・クラバモックスは今でこそ分包品があって調剤も楽ですが、発売当初はボトル品しかなく、添付文書上にも溶解してから投薬するように書かれていました。添付文書上、溶解して出すことが前提の薬なので自家製剤加算は取れない。発売当初、ウチの系列店全店に注意喚起がありました。。。
↓根拠
薬価基準に収載されている医薬品に溶媒、基剤等の賦形剤を加え、当該医薬品と異なる剤形の医薬品を自家製剤の上調剤した場合に、次の場合を除き自家製剤加算を算定できる。
- (イ) 調剤した医薬品と同一剤形及び同一規格を有する医薬品が薬価基準に収載されている場合
- (ロ) 液剤を調剤する場合であって、薬事法上の承認事項において用時溶解して使用することとされている医薬品を交付時に溶解した場合
まどろっこしい表現が多くて嫌になるこういう通知・・・DS同様「やってることは同じだから除かないでくださいよ・・・」と思うことも多いですが、今回の件もまた【次の場合を除く】に該当するわけです。。。
余談ですが、クラバモックスは粉質がやや湿っぽくて、処方が来るたびに薬剤師さんが「あぁぁぁ!作りにくい!」ってなってた記憶があります。加算取れないのに。。。
ということで、今回はレセプト取り下げ申請→計量混合加算で再請求で着地しました。
おさらい。
液剤として処方することが前提のお薬は、溶解して投薬しても自家製剤加算は認められない!!計量混合加算が取れるかを検討しよう!!
錠剤を1/4に割錠。自家製剤加算はなぜ算定出来ぬ・・・??
2022年4月以降、点数は従来の2割に減ったものの、自家製剤加算の算定要件は変更し、割線がなくても下の規格がなければ算定可となりました。もちろん薬剤師の薬学的観点から問題がなければ。
今まで手間のかかる割錠でも割線がないことで加算できないことはよくあったよね。でも点数は2割に減るけどこれでそんな事例も加算とれるようになったね、良かったね!薬剤師さんのサービス業務→価値がある業務に変わったね。
①下の規格は無いのに減点された4分の1錠の割錠
ということで、改定後に舞い込んだ4分の1の割錠に自家製剤加算を算定しました(もちろんそれに該当する下の規格はないものです)。
すると3か月後に来ました。減点通知。「当該薬剤は自家製剤加算の算定要件を満たしていません」との減点内容です。。。
ちなみに2022年4月の調剤報酬改定の概要はこちら
令和4年度調剤報酬改定の概要(調剤)
厚生労働省 保険局 医療課上記PDFの18枚目に自家製剤加算についての記述があります
厚生労働省HPより
書いていない、書いてない、4分の1はダメなんてどこにも書いていない!!
これは異議申し立てしてもいいのでは?再審査請求しようか?悶々と考えて、やはりいつもの「審査機関に直接聞いてみる」ことにしました。
②4分の1は正確性に欠けるからダメ!製薬メーカーに正確性を確認したうえで割錠したとしてもダメ!何してもダメ!
さてさて、今回減点通知がきた審査機関に直接問い合わせてみました。
すみません、割線がなくても自家製剤加算算定可能になったので、4分の1でも算定可能と思うんですけど、なんで減点なんでしょうか?
4分の1は、2分の1に比べて正確性に欠けるからです。4分の1に割ったとして、有効成分が全て均等に含まれているという正確性です。
正確性に欠けるもので加算をとることは出来ません。
でも割線のない錠剤の2分の1の割錠は算定してもいいんですよね。正確性が担保されているとは限らなくても。
そうですね、4分の1よりは正確と思われるので。
では、製薬メーカーに「4分の1の割錠も正確に割錠すれば有効成分は均等に含まれる」という確認が取れれば、算定可能ということでしょうか?その場合コメントも入れますけど。。。
それでも絶対に減点しないとは言えません。最終的には審査する薬剤師や医師の判断なので、その人が4分の1はダメと判断すれば減点となります。
・・・どんなに頑張っても最終的に加算が認められないこともある、ということなら結局算定するわけにもいきません。。。電話のあとの残念な気持ちと言ったら。。。
ちなみに文字だけ読むとケンカしてるみたいですが、お互いケンカ腰な会話ではありませんのでご安心ください。ケンカは嫌いです。。。
③結論:4分の1に割錠した時の自家製剤加算は諦めた
ということで、なんかもう実際のところ錠剤を割った時の有効成分の均一性なんて建前の話で、単純に「2分の1以外算定しちゃダメ」というのがお上の考えなのでしょう。
2022年の調剤報酬改定の概要が発表された時、割錠に関しては、「算定できる点数が減ったけど、件数は増える」と思っていたのに現実には「点数が5分の1に減った、ほんの少しだけ件数が増えた、ただそれだけ」となりました。結果的にはマイナス改定となったと言わざるを得ません。
まとめ:「〇〇県では認められない」にご注意
今回は自家製剤加算・計量混合加算にまつわる判断が悩ましい事例をピックアップしてみました。いかがだったでしょうか。
ちなみに私はレセプトの審査が比較的厳しいと言われている岡山県在住でして、もしかしたら審査に寛容な県であれば、この限りではないのかもしれないことも付け足しておきます。よくある話ですよね。寛容な県と厳しい県の審査の温度差。
早急にレセプト審査をAIがしてくれるようになることを個人的には希望します。温度差を感じるたびにそう思わざるを得ませんが、そんなに遠くない未来な気もします。大量に人員解雇が起こりそうですがやむを得なくないですか。。。そんなこと言ったら調剤事務もちょっと危ういのですけどね。。。
さて、他にも「こんな処方でレセコン入力に困った!」などの事例があれば、ぜひコメント欄やお問合せフォームからでもOKなので教えていただけると嬉しいです!
困った事例などがあればぜひ全国の調剤事務さんと共有しましょう~^^